暑さ寒さに耐えて
暑さ寒さに耐えぬいて、仕事をする職人は大変なのだ。 一度でも職人と言われる世界で仕事をすればわかる、半端なことではできない。 職人気質な意思がないと続かないし、夢がないと容赦無くぶつかる苦難の壁に負けてしまう。 そんな苦難を乗り越えた職人は若い人であっても自信ができる。 自分の仕事に誇りが持てる。 そんな職人は見ていても頼り甲斐がある。 その人は誠実に仕事をしてきたのだという安心感があるのだ。 他人事のように聞こえるかもしれないが、苦労をして仕事は覚えるものなのだ。
僕は、サラリーマンに向いていないと思い込み、脱サラしたのが40歳のころだ。 「俺は何でもできるんだ」僕は、自分の実力を知らない、思い込みだけのサラリーマン根性で、いろんな仕事にチャレンジしたが案の定上手くいかなかった。 上手くゆくはずがないのだ。 世の中には、自分の知らないところで必死に頑張っている人がいて、そんな苦労の人を全くと言っていいほど僕は知らなかったのだ。 独立して職人仕事をするにせよ専門的な仕事をするにせよ、僕はその世界の苦労を全く知らなかったのだ。
そのことに気がついた僕は、とにかくいろんなことをいちから勉強しようと思った。 人のために、お金を稼ぐためにできることは何でもやろうと思った。 解体作業では夏の暑さで意識が飛んだ。 塗装作業や吹き付け作業もした。 脚立から何度も落っこちた。 屋根にかけた梯子とともに地面に落っこちた。 高いビルから1本のロープにぶら下がり窓拭きや補修の仕事もした。 人が嫌がるトイレの清掃も引き受けて便器もピカピカに磨いた。 見習い大工仕事やクロス張りなど内装の仕事もした。 頼まれれば便利屋になった。 とにかくお金を稼ぐためにいろんな仕事を必死にやった。 しかし自分はいろんな仕事をしているだけのにわか職人だという変な自負があった。 本当の職人には程遠いものがあって、本当の職人のそれは仕事に対する覚悟なんだと思う。 だから、僕は一つのことに誇りをを持って仕事に打ち込む職人には頭が下がるのだ。
僕はそんな半端じゃない世界で生きる職人の歌をいつか作りたいと思っていた。 「男心の涙酒」は、そんな本気の職人に憧れる若い人たちにぜひ聞いてもらいたい。 にわか職人にしかなれなかった僕が言える立場でないが、本当の職人、専門家になるにはその道の苦労を積み上げるしかないのだ。
暑さ寒さの中で働くことは半端な苦労ではない。 このところの暑さはまた尋常ではない。 そんな苦労の先に達成した仕事はすごいことなのである。 本当にそう思うのである。
男心の涙酒
五臓六腑に 染み渡る
今日の仕事の コップ酒
夢の かけらを 肴(あて)にして
古い奴だと 笑われる
汗が 汗がよ 男の証(あかし)なんだよ
胸を張れ 意地を張れ
男心の 涙酒
汗の匂いが 染み込んだ
破れ綴った 作業服
生きてきたのさ 茨道
ダサイ奴だと 笑われる
男同士が 知ってる心
嘆くなよ 腐るなよ
男心の 涙酒
暑さ寒さに 耐えながら
この腕一つを 糧にして
明日の 稼ぎを 夢に見る
受けた情けが 身に染みる
辛抱幾多の 七坂八坂
苦労だけ 華と咲け
男心の涙酒
苦労だけ 華と咲け
男心の 涙酒
作詞作曲 青山哲二 編曲 レレやぐち 歌 宍戸いちろ
「男心の涙酒」 ブルーマウンテンズ チャンネル YouTube